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統一球問題とガバナンス [経済]

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先々週の66日(木)、友人からチケットをもらって、東京ドームに巨人vs北海道日本ハム戦を観に行った。前回、東京ドームでプロ野球を観たのは、松井の巨人最後のシーズン(2002年)だったから、実に11年ぶりだ。そのときは松井が期待通りにホームランを打って、巨人が勝ったのをよく覚えている。最近はナイターのテレビ放映も減り、プロ野球人気も衰えたかと思っていたが、それは私の誤解だった。東京ドームはほぼ満員だった。

 

試合は、巨人打線が日本ハムの木佐貫を打ちあぐね、敗戦ムードが漂っていたが、何と8回裏に阿部の逆転3ランが飛び出し、そのまま巨人が勝った。阿部の打席の前に、「ここで3ランが出て、巨人が勝ったら最高だよね」と冗談半分に隣の友人に話したが、それが本当になってしまって驚いた。右翼席に突き刺さる鋭いライナー性の当たりだった。

 

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この試合を観た翌週、「統一球の変更」というニュースが飛び込んできた。最初聞いたときは、何のことかよくわからなかったが、どうもいろいろとウラのありそうな怪しげな「事件」だ。このブログでは、怪しげな事件はあまり取り上げないことにしているが(笑)、612日(水)に行われたNPB(日本野球機構)の記者会見は何とも感じの悪いものだった。私自身は正確な事実関係を知るよしもないが、印象論だけでも確実に言えることがいくつかある。それらを記しておきたい。

 

612日のNPBの記者会見(ノーカット版)はYouTubeで見たが、はなはだわかりにくい内容だった。例えば、ボールの物理特性の「変更」に関する事実説明がそもそも混乱していた。「反発係数」が「公差」(許容されるバラツキの大きさ)の範囲内だったので(ボール発注の契約内容を)「変更」したわけではないと言いつつも、平均値が(統計的に有意に)変化した(つまり納品されたボールの質が平均的に変化した)ことは認めている。平均値の変化の問題をバラツキの問題にすり替えているような印象を受けた。

 

また、記者から「今シーズンになって反発係数が上がったとの報告を受けていたのではないか」と問われたコミッショナーは、そうした報告を受けていたことは認めたが、「それが球のせいに結びつくかどうかは別問題」とし、「日本の選手は適応力も高いし、バットとかその他のところで工夫をして、だんだん自らを統一球に合わせてきていると理解していた」と答えた。オイオイ、大丈夫? ボールの反発係数とはボール自体の物理的特性であって、バットの質や選手の力量とは関係ないでしょ?(実際、反発係数は鉄の壁にぶつけて計測されている。)

 

コミッショナーからは、「ガバナンスの強化」との陳腐なフレーズが繰り返された。「事務局内部の意思疎通を欠いていた」、「事務局内のガバナンスの強化を図って参りたい」、「昨日まで全く知りませんでした」、「私のガバナンスに対する監督不十分」、「まずガバナンスの強化に取り組みたい」・・・。彼にとって「ガバナンスの強化」とは、NPBの事務局スタッフが、自分に対して、もっとちゃんとわかりやすく説明しろよ、ということなのかもしれない。

 

「ガバナンス」(governance)とは多義的で、なかなか日本語に訳しにくい言葉だが、最大公約数的に言えば、国や組織がどのように統治されているか、より具体的には、誰がどのように国や組織の重要な意思決定をしているか、という意味である。したがって、下の者に対してトップにちゃんと報告、説明するよう求めることを「ガバナンスの強化」というのも、誤用とまでは言えないかもしれない。しかし、NPBという影響力の大きな組織のガバナンスとしては、あまりに矮小化された理解であろう。

 

ガバナンスに関する議論は、よく制度論に流れがちだが、私は結局のところ意思決定主体の資質の問題だと思っている。具体的には、次の3条件を満たしているかどうかだ。

①適切な意思決定を行うのに必要な情報を持っているか、

②適切な意思決定を行うのに必要な能力を持っているか、

③適切な意思決定を行う動機を持っているか。

 

①と②については、あえて説明するまでもないだろう。野球というスポーツそのものに対する知識や理解に加え、興業面の知識や理解、さらに選手やファンなど「現場」に関する理解も不可欠だ。③は、①や②が備わっているとしても、誰か特定の利害関係者のみの利益を図り、不公正な意思決定を行う動機がないかどうか、ということだ。野球界の外部から来た人物だから公正だとはかぎらない。自分を推薦してくれた誰かさんの顔色ばかりうかがうという可能性だってあるからだ。それに加えて、①や②の資質を欠いているとしたら救いようがない。

 

私は、現在のコミッショナーの資質について十分な情報を持っていないので、彼に関する具体的な論評は避けたい。ただ、正直言って、その資質に疑念を感じさせる記者会見ではあった。


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