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「メグレ警視 国境の町」(Maigret chez Les Flamands、1991年、フランス映画) [映画]

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私は、フランスの小説家ジョルジュ・シムノン原作の推理小説、「メグレ警視」のDVDシリーズを20巻持っている。前回、ベルギーの南北対立について触れたが、メグレ警視シリーズの中に「メグレ、フラマン人の家にて」(邦題は「国境の町」)という作品があり、それを思い出した。DVDシリーズ20巻の全てで、メグレは犯人を見つけているが(小説なら当然か)、唯一、この作品では見つけた犯人を見逃している。いったいメグレはどうしたのか。その意味で非常に印象深い作品だ。

 

事件の舞台は、ジヴェ(Givet)というベルギーとの国境に接するフランス領の小さな町だ。この町はアルデーヌ県の最北端に位置しており、ムーズ川(la Meuse)が流れている。ムーズ川とは、パリ盆地の東側に発し、ロレーヌ地方、アルデーヌ地方を通ってベルギーに入り、リエージュ(Liège)、さらにオランダに入ってマーストリヒト(Maastricht)などの都市を通り、北海に注ぐ国際河川だ(オランダではマース川と呼ばれる)。

 

事件の主要人物は下表の通りだ。

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ペータース家は、第2次大戦中に蓄財したフラマン人で、戦後、ジヴェにやってきた。ムーズ川沿いでカフェを営むが、客は地元客ではなく、通りがかりの船乗りたちだ。一方、ピエブッフ家は地元のフランス人で労働者一家だ。どうした経緯か、両家の子供たちは互いに知り合い、ピエブッフ家の娘ジェルメーヌはペータース家の息子ジョセフの子供を身ごもる。しかし、ジョセフにとってそれは「遊び」であり、彼は従妹のマルグリットと婚約している。

 

事件は、ある晩、ジェルメーヌがペータース家にお金の無心にきたあと起こる。ペータース家の母親は彼女にお金を渡し、彼女は帰っていくが、その後、行方不明となる。彼女を妊娠させたジョセフが殺したのではないかと嫌疑がかかるが、ペータース家側は、彼はその夜、ルーヴァンにいたとアリバイを主張する。そんな中、メグレは、おばさんからペータース家を助けるよう頼まれて、「私用」としてジヴェにやってくる。

 

捜査を進める中でいくつかの事実が明らかになる。

ペータース家は、よそ者のフラマン人であること、裕福であることなどから、地元のフランス人からは憎まれていた。

行方不明だったジェルメーヌの遺体が、やがてムーズ川から見つかった。死因は頭蓋骨陥没だった。

アンナとジェラールは、以前つき合っていたことがある。(ジェラールによれば、彼の方からふったと言う。)

 

この物語を印象深くしているのは、グリーグの「ソルヴェイグの歌」だ(ご存じない方には、YouTubeなどで、ぜひ歌詞付きでお聞きになることをお勧めしたい)。アンナやマルグリットがこの歌をピアノで演奏するシーンが、重要な箇所で出てくる。イプセンのつぎの歌詞とともに。「冬は去りゆき 愛しい春は流れゆく・・・ 私は待つ 婚約者よ 最後のときまで。」

 

ムーズ川の川船の前科者の船長に嫌疑がかかるのだが(彼の船室からはハンマーも発見された)、彼はベルギーに逃走してしまう。一方、メグレは事件が未解決のままパリに帰ると言う。彼の中では犯人がわかっていたのだ。その当日、メグレはペータース家の2階でアンナと話をする。アンナは事件当夜のことを正直に話す。

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アンナ:「私はどうしたらいいの?」

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メグレ:「自分は今、職務中ではない。あとはあなたの問題です。」

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パリ行きの列車に乗ったメグレは、ホームに旅支度をしたアンナが現れるのを見た。彼女もどこかに旅立つようだった。

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「ソルヴェイグの歌」が耳に残る物悲しい物語だった。メグレもそう感じたに違いない。

 


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