SSブログ

ベルギー人になりたがるフランス人 [フランス]

20130105LeMonde_01.jpg 

201315日付、仏ル・モンド紙の1面トップ記事の見出しは、「ますます多くのフランス人がベルギー人になりたがっている」(De plus en plus de Français veulent devenir belges)というものだった。何のことかと思って読んでみると、例のドゥパルデュ事件(l’affaire Depardieu)の関連記事だった。

 

ドゥパルデュ事件というのは、フランスの高名な映画俳優、ジェラール・ドゥパルデュ(Gérard Depardieu)が、フランスの高額所得者に対する75%という高率の課税を嫌って、税率が13%と低率であるロシアへの帰化を申請し、プーチン大統領の後押しもあって、13日にそれが認められたというニュースだ。ドゥパルデュはまた、昨年末、フランス-ベルギー国境の近く、ベルギー領のネシャン(Néchin。フランスのリールから数キロ)に家を買うなどして、ベルギーへの帰化も検討していた。もう一人の大物、LVMHMoët Hennessy - Louis Vuitton S.A.の会長ベルナール・アルノー(Bernard Arnault)もベルギーへの帰化を申請しており、数週間のうちに認められると言われている。

 

20130105LeMonde_02.jpg 

 

記事によると、こうした有名人以外にも、2012年に126人のフランス人がベルギーに帰化申請したが、これは2011年の63人から倍増している。「倍増」と言ってもフランスの人口6,600万人から見たら微々たるもので、ふつうだったらニュースにはなり得ないだろうが、有名人が絡むと大きなニュースになる。帰化増加の理由として、記事はベルギーにおける金融資産課税の税率が低いことを挙げている。企業がその(登記上の)拠点を税負担の多寡によって選ぶようになって久しいが、今後、個人のレベルでも、(税負担を気にするほどの高額所得者については)そうした動きが増えていくのかもしれない。

 

今回のニュースを聞いての私の感想は2つだ。ベルギーはイタリアとともに、国内の南北問題で知られている。豊かな北の住民の間には、働き者で高所得の北の住民が怠け者で低所得の南の住民を社会保障システムなどで養っているとの優越感がある。しかし、この種の優越感は、経済が不況になると容易に被害者意識、排外思想に転化する。ベルギーの場合、南北問題は民族・言語問題とも不可分だ。北の住民は主にフラマン人であり、言語はフラマン語(オランダ語に近い)、一方、南の住民は主にワロン人で、言語はフランス語だ。私がフランス滞在中の20106月に行われた総選挙では、北部フランドル地域の分離独立を訴える政党が躍進したが、その当時、フランスの新聞に南部ワロン地域はフランスに併合されるんじゃないかという、半分冗談みたいな記事が載ったことがある。そのときには、民族対立に苦しむ隣の小国を横目に、「博愛心」の大国、フランスの優越感のようなものを感じたが、今回のドゥパルデュ事件は、フランスの「博愛心」も怪しいものとの印象を強めた。

 

もう一点、ドゥパルデュ自身について。それほどの映画通でもない私が彼の名前を知ったのは、「モンテ・クリスト伯」のDVDによってだ。1998年、フランスのテレビドラマとして作製されたこの映画は、私がこれまで繰り返し見ているDVDの一つで、主人公モンテ・クリスト伯ことエドモン・ダンテス役のドゥパルデュは実に見事な演技をしている。しかし、その後フランス滞在時にテレビなどで見る彼はビア樽のように病的なまでに太り、正直、あまり正視したくない姿だった。それ以上、何と言ってよいか、言葉がない。

LeComteDeMonteCristo.jpg

 

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。