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ブリューゲル「謝肉祭と四旬節の争い」(1559年) [美術]

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日本にいたときはあまり興味がなかったが、ヨーロッパに行って、実際にその作品を見て好きになった画家がいる。ピーテル・ブリューゲル(Pieter Bruegel1525?-1569)だ。彼には、同名の長男(1564-1638)がおり、次男のヤン・ブリューゲル(1568-1625)、さらにその次男の息子で同名のヤン・ブリューゲル(1601-1678)も皆画家である。ただし、本ブログで単にブリューゲルという時は父親のピーテル・ブリューゲルを指すものとする。

 

ブリューゲルの画を世界で一番多く所蔵しているのは、オーストリア、ウィーンの美術史博物館だ。「雪中の狩人」、「子供の遊び」、「農民の婚礼」、「バベルの塔」などの有名作品がある。ドイツ、ベルリンの文化フォーラム・絵画館は「ネーデルラントのことわざ」がウリだ。ベルギー、ブリュッセルの王立美術館にもブリューゲルのコーナーがあり、「ベツレヘムの戸籍調査」、「イカロスの墜落」などがある。私は、特に意図したわけではないが、ブリュッセルウィーンベルリンの順で訪れた。そして、最初のブリュッセルで、この画家にすっかり魅了されてしまった。

 

冒頭の写真は、ウィーンの美術史博物館で撮影した父・ピーテル・ブリューゲルの「謝肉祭と四旬節の争い」(1559年)だが、ブリュッセルの王立美術館にも長男・ピーテル・ブリューゲルによるこれとウリ2つの同名の画がある。私はそれにすっかり魅了されてしまったのだ。さまざまな職業の人々がユーモラスな格好で街に繰り出しているようすが細密に描かれている。中でもユニークなのは、画面の中央より左上に描かれた数人の身体障がい者たちだ。

 

いったいこれまで世界中の人物画の中で障がい者はどれくらい描かれてきただろうか。彼らが人口に占める割合より、かなり低いのではないか。しかも、私の推測を言えば、近世における障がい者の対人口比率は現代より高かったはずだ。先天的な要因はさておき、後天的な要因について言えば、医療サービスの水準が量・質とも格段に低かったからだ。(ただし、これと逆方向に働く要因として人口高齢化による障がい者の増加が考えられる。)例えば、私は約10年前、左足首を複雑骨折した。幸い手術を受けて骨折前とほぼ同じ状態に戻ったが、もし、適切な手術や治療を受けることができなければ、足首が曲がったまま骨がくっついて固まってしまったはずだ。そのとき、つくづく医療の進歩は有り難いものだと思った。

 

他のほとんどの画家が決して描かなかった障がい者を、ブリューゲルはなぜ描いたのか、それを知りたい、と思った。

 


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