パスカル「パンセ」-時は全てを癒やすか? [パンセ]
「時は、苦しみや争いを癒す。なぜなら人は変わるからである。もはや同じ人間ではない。侮辱した人も、侮辱された人も、もはや彼ら自身ではないのである。それはちょうど、かつて怒らせた国民を、二世代たって再び見るようなものである。彼らは依然としてフランス人ではあるが、しかし同じフランス人ではない」(B122、S653、L802)。«Le temps guérit les douleurs et les querelles, parce qu’on change : on n’est plus la même personne ; ni l’offensant, ni i’offensé ne sont plus eux-mêmes. C’est comme un peuple qu’on a irrité et qu’on reverrait après deux générations : ce sont encore les Français, mais non les mêmes.»
パスカルのこの1節を読んだとき、半分以上は同意したが、全面的に同意してよいものかどうか、正直迷った。時間の経過は、確かに辛い体験を記憶の奥底に追いやってくれる。そうしないと日々生きていくことはできないからだ。しかし、辛い記憶は単に沈殿しているだけであって、消え去ってしまったわけではない。そして、それは一人の個人の中でのみならず、世代間でも引き継がれていくことがある。パールハーバーで、南京で、広島で、沖縄で・・・。
私は、ふだんテレビドラマはほとんど見ないのだが、TBSの「運命の人」を3週間前にたまたま見て以来、今日の最終回まで観た。松たか子がよかったし、ストーリー、構成の妙にも思わず引き込まれてしまった。今日のテーマは、過去の体験といかに向き合うかということだった。何度か不覚にも涙があふれ、この記事を書く気になった。パスカルは単純すぎる、と。
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