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パスカル「パンセ」-人は憎みあうもの [パンセ]

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パスカルはときに絶望的にまで悲観的な人間観を述べる。そして、それをリアルだと感じてしまう自分がいる。

 

「すべての人は生来たがいに憎みあうものである。人は邪欲を公共の福祉に役立たせようとして、できるだけ利用した。だが、それは見せかけにすぎない、愛の虚像に過ぎない。実のところ、それは憎しみにほかならないのだから」(B451S243L210)。«Tous les hommes se haïssent naturellement l’un l’autre. On s’est servi comme on a pu de la concupiscence pour la faire servir au bien public. Mais ce n’est que feindre et une fausse image de la charité. Car au fond ce n’est que haine.»

 

フランス語のfraternité(友愛、博愛)は、自由(liberté)、平等(égalité)と並んでフランスの有名なスローガンだし、solidarité(連帯、団結)という言葉も頻繁に使われる。日本の昨年の「流行語大賞」の中にも「絆」(lien)があった。私は、こうした言葉が嫌いではないが、あまりにしつこく連呼されると、われわれがそうした資質をそもそも欠いていることの謂ではないかと、勘ぐりたくなってしまう。

 

しばらく前に、時の総理大臣が「友愛」という言葉をキャッチフレーズに使っていた。当時、私はパリに住んでいたが、ネットで読んだ日本の新聞(確かS新聞だったと思う)の論説記事でそのことを取り上げて曰く、「友愛などという甘っちょろい態度は厳しい外交の世界では通用しない。そもそも友愛などという日本語は英語に翻訳できない、・・・」(直接引用ではなく、記憶に基づく大意)。前段は私も多かれ少なかれ同意する。しかし後段にはちょっと驚いた。普通に考えれば、友愛というのは、そもそも英語のfraternity(仏語ではfraternité)の翻訳語だ。語源はラテン語の「兄弟愛」である。さらに突っ込みを入れるなら、この(元)総理大臣は兄弟揃って国会議員をしているが、お互いあんまり仲がよくないらしい(笑)。言葉が軽くなっている。

 

*写真は、フランス、ナントのブルターニュ大公城の博物館に展示されている18世紀終わりの黒人奴隷貿易(la traite des noirs)で使われた鎖(entrave)。ナントはかつて三角貿易(ヨーロッパ→アフリカ→アメリカ→ヨーロッパ)のヨーロッパ側の拠点港の一つとして栄えた。

 

 


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