パスカル「パンセ」-考えることの偉大さと愚かさ、そして愚かさを知ることの偉大さ [パンセ]
「考えが人間の偉大さをつくる」(B346、S628、L759)。«Pensée fait la grandeur de l’homme.»というのが、パスカルの基本的な思想だ。しかし、彼は「考える」ことが手放しで素晴らしいとは言わない。
「人間の尊厳のすべては、考えのなかにある。だが、この考えとはいったい何だろう。それはなんと愚かなものだろう。・・・考えとは、その本性からいって、なんと偉大で、その欠点からいって、なんと卑しいものだろう」(B365、S626、L756)。«Toute la dignité de l’homme est en la pensée. Mais qu’est-ce que cette pensée ? Qu’elle est sotte ? ... Qu’elle est grande par sa nature, qu’elle est basse par ses défauts.»
そして、逆説的だが、こうした愚かさ、惨めさを知ること自体が、人間の偉大さの証であるという。
「人間の偉大さは、人間が自分の惨めなことを知っている点で偉大である。樹木は自分の惨めなことを知らない」(B397、S146、L114)。«La grandeur de l’homme est grande en ce qu’il se connaît misérable. Un arbre ne se connaît pas misérable.»
「人間の偉大さは、その惨めさからさえ引き出されるほどに明白である。なぜならわれわれは、獣においては自然なことを、人間においては惨めさと呼ぶからである」(B409、S149、L117)。«La grandeur de l’homme est si visible qu’elle se tire même de sa misère. Car ce qui est nature aux animaux, nous l’appelons misère en l’homme.»
パスカルは、ある事象(この場合は「考える」)をつねに複眼的に見ようとしている。私が「パンセ」に惹かれる理由の一つだ。
*写真は、フランス、クレルモン・フェランのパスカル通りにて。
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