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パスカル「パンセ」-固定点の役割 [パンセ]

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「すべてが一様に動くときには、船の中のように、見たところ何も動かない。みなが放縦のほうへ向かって行くときには、だれもそちらに向かって行くように見えない。立ち止まった者が、固定点の役割をして、他の人たちの行き過ぎを認めさせる」(B382S577L699)。«Quand tout se remue également, rien ne se remue en apparence, comme en un vaisseau. Quand tous vont vers le débordement, nul n’y semble aller : celui qui s’arrête fait remarquer l’emportement des autres, comme un point fixe. »

 

「反対があるということは、真理を見分けるよいしるしではない。多くの確かなことが反対されている。多くの嘘が、反対なしにまかり通っている。反対のあることが嘘のしるしでもなければ、反対のないことが真理のしるしでもない」(B384S208L177)。«Contradiction est une mauvaise marque de vérité. Plusieurs choses certaines sont contredites. Plusieurs fausses passent sans contradiction. Ni la contradiction n’est marque de fausseté ni l’incontradiction n’est marque de vérité.»

 

上の「パンセ」の指摘は、いずれも、とても深く重いと思う。

 

3.11」から1年、マスコミは今ごろになってようやく政府の原発事故対応を批判する報道や論評で喧(かまびす)しい。しかし、1年前はどうだったか。政府の「大本営発表」は「ただちに影響はない」の一点張り、テレビに登場する「専門家」たちも、多くがそうした見方を是認していた。小出裕章氏のような「固定点」は大手マスコミからは黙殺されていた。記者会見等の場で、「原子炉は冷却できているのか、できていないのならメルトダウンは当然の帰結ではないか。なぜその可能性を否定するのか」、「SPEEDIというシステムがあるはずだが、その予測結果はどうなっているのか」などと追及したジャーナリストはいなかったのか。いたけれど、上層部に握りつぶされて、報道できなかったのか。いずれにせよ情けない話だ。

 

およそインテリたる者(自ら当事者としては行動しないが、その知識や思考によって世の中へ貢献することが期待されている者。そして、そうしたサービスによって禄を食んでいる者)、つねに、冒頭に引用したパスカルの言を胸に刻み込んでおくべきである。

 

*写真は、フランスのマルセイユ旧港を少し出た沖合に浮かぶヨット。

 


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