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ルーヴルのアトム [美術]

2008_11Astroboy.JPG 

フランスでは、日本の漫画が結構ブームだ。しかし、だからと言ってルーヴル美術館に、かの「鉄腕アトム」(フランスでは、英語版に倣ってAstroboyと呼ばれている)が展示されているわけではない。

 

ルーヴル美術館、ドゥノン翼2階のイタリア絵画コーナーをあてもなく見て回っていたとき、ある作品の前で立ち止まってしまった。下の画である。人が空を飛んでいる、しかもアトムのように両足からジェット噴射を出して。宗教画で人や天使が空を飛んでいるように描かれることは珍しくないが、アトムのようにジェット噴射で飛んでいるとなると話は別だ。

 

2009_12Sassetta.jpg 

作者は、15世紀イタリアのステファノ・ディ・ジョヴァンニ(Stefano di Giovanni)、またの名をサセッタ(Sassetta)という。画の説明は次の通りだ。

 

Le bienheureux Ranieri délivre les pauvres d’une prison de Florence. Entre 1437 et 1444.

Elément de la prédelle postérieure du polyptyque de Borgo Sansepolcro. Le bienheureux Ranieri vient délivrer quatre-vingt-dix pauvres gens, retenus dans une prison de Florence, qui lui avaient écrit pour lui demander de l’aide.

福者ラニエリがフィレンチェの監獄から貧者を解放する。1437年から1444年の間の作。

ボルゴ・サンセポルクロの多翼祭壇画の後ろのプレデラ(祭壇後方の装飾衝立の下部の装飾画)の構成要素。福者ラニエリが90人の貧しい人々を解放しにやってくる。彼らはフィレンチェの監獄に入れられており、ラニエリに助けを求めて手紙を書いたのだった。

 

貧者たちがなぜ監獄に入れられていたのかはわからないが、弱きを助け強きをくじくという筋立てはアトムと通じるものがある。15世紀のイタリアと20世紀の日本で、それぞれ似たことを考え、表現した人がいるというのはちょっとした発見だった。人間の考えることは無限大だが、これまでさまざまな地域、時代に生きた人々の数も膨大である。似たようなことを考えた人は、きっとどこかに、いつかいたに違いない。

 


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sasaki akiko

facebookで、紹介させていただきました。
とても面白い絵で気に入りました^^
by sasaki akiko (2013-01-19 14:56) 

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