ピカソ「若い女性」(1929)-天才の多才 [美術]
これは、ストックホルムの現代美術館で見かけたピカソの「若い女性」(la demoiselle)、1929年の作である。美術館ではキュービズムのコーナーに置かれていた。以前、ロンドンのナショナル・ギャラリーで見た「鳩を抱いた子供」(1901)とは全く異なる画法、印象の画だ。私には、これが若い女性だと識別しうる術はない。頬に貼り付けられた寒暖計(と思しきもの)は、若い女性が周囲の環境変化に敏感であるとの謂いであろうか。いずれにせよ少なくともハッピーな感じではない。
藤田嗣治が、ピカソについて面白いことを書いている。「ピカソの長所は一定の形式に固定せず、自分の画風を他の人が真似しだすと、直ぐまた新しいものを見付けて、若い連中を引き連れて先へ先へとどんどん水平線を目指して進んで行く人である。従って彼の仕事は非常に種類が多いのであって、即ち彼は頭に浮かんだことをどんどんやって行くという質である。・・・ピカソのような人間が出ると、非常に危険である。今後およそ40年間という間、ピカソは若い犠牲者を引き連れていくわけである」(藤田嗣治『腕一本/巴里の横顔』講談社文芸文庫、2005年、pp. 175-176)。なるほど、少しわかる気がする。
2012-02-29 21:55
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