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「戦火の馬」(War Horse、2011年、アメリカ映画) [映画]

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先日、飯田橋のギンレイホールでスティーブン・スピルバーグ監督の「戦火の馬」を観た。英語の原題を直訳すれば「軍馬」だが、ドラマティックな本作品にはやはり「戦火の馬」の方がふさわしいだろう。主人公の少年アルバートと彼が育てた名馬ジョーイの数奇な運命は、あり得ないようなことの連続でフィクションと言えばフィクションだが、最後の方は感動で涙を流していた。

 

  ×  ×  ×

 

物語は、第一次世界大戦前夜のイギリスのある農村で始まる。サラブレッドの仔馬が競りにかけられ、小作農のテッド・ナラコットが無理をして落札する。しかも彼の地主であるライオンズに競り勝ってである。テッドの妻ローズは、帰宅したテッドに「農耕用に調教できもしない馬を、どうしてそんな高値で買ったのか」と難詰する。案の定、地主のライオンズがやってきて、小作料の滞納を責め、払えないなら馬を取り上げ、出て行ってもらうと通告する。

 

しかし、ナラコット夫妻の息子アルバートは、この馬の出生の瞬間を目撃して以来、ずっとこの馬に魅せられていた。彼はこの馬をジョーイと名付け、熱心に調教する。その甲斐あって、ジョーイに荒れ地を鋤かせることに成功し、地主を見返す。しかし、喜びもつかの間、第1次世界大戦が始まり、貧窮きわまる父親は徴用に来たイギリス軍に対し、ジョーイを売ることにした。

 

その後のジョーイの運命は、まさに数奇と言うにふさわしい。持ち主は、イギリス軍騎兵隊ドイツ軍ドイツ人の脱走兵兄弟フランス人少女とその祖父ドイツ軍砲兵隊と転々とし、ついに第1次大戦の主戦場だったソンム平原でジョーイは「脱走」する。ソンムでは、幾重もの塹壕にこもったドイツ軍とイギリス軍(実際にはフランス軍も)が対峙し、砲撃戦や時には鉄条網の張り巡らされた地上に出ての白兵戦が繰り返されていた。

 

脱走したジョーイは鉄条網に絡まって身動きがとれなくなってしまう。しかし、一人のイギリス軍兵士が、ドイツ軍兵士の助けを借りながら奇跡的にジョーイを救い出し、自陣地に連れて帰る。何とそこには、前線に出征し、毒ガスで負傷したアルバートがいて、「二人」(1人+1頭)は奇跡の再会を果たすのだった・・・。

 

  ×  ×  ×

 

この映画の主役は何と言ってもジョーイとアルバートだ。ジョーイは何度か、仲間の黒色の馬を救うのだが、その動きは人間の役者顔負けだ。また、アルバートのジョーイに対する調教ぶりや愛情の注ぎ方も素晴らしい。

 

何人かの脇役も印象に残った。例えば、アルバートの父親テッド。酒飲みで足が不自由なうだつの上がらない中年男に見えるが、実は、ボーア戦争の際に負傷した戦友の命を救ってメダルをもらうも、そのことを他人に自慢しないどころか、メダルをゴミ箱に捨ててしまうという一本気な性格の持ち主だ。母親のローズも、気性は激しいが、性根のすわった女性だ。小作料の滞納で、一家がいよいよ住戸と農地から追い出されようかと苦境に陥ったとき、夫が「もう自分への愛情がなくなったのなら、それも仕方ない」と言ったのに対し、「憎さはどんどん募っているが、愛情はちっとも減っていないわ」と言い返す。映画のラストシーンで、テッド、ローズ、アルバート、ジョーイの4人(3人+1頭)が再会を果たしたのは、まさにハッピー・エンドだった。そして、この一家には「幸せ」が値する。

 

また、一時期ジョーイを匿ったフランス人少女の祖父役は、フランス映画「サラの鍵」でサラを匿ったブルゴーニュの農夫役を演じた役者さんだが(Niels Arestrup)、今回も印象に残る役割、演技だった。あと、第1次大戦を扱った映画は、第2次大戦に比べ少ないが、今回の主要舞台の一つソンム(Somme)は、私が好きなフランス映画«Un long dimanche de fiancailles»にも登場した戦場で、感慨深かった。

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