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Les Choristes(2004年、フランス映画) [映画]

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私は最初この映画を、フランス滞在中テレビで見た。偶然テレビをつけて、途中から見たのだが、全部見たいと思い、あとからDVDを買った。それ以来、何度か繰り返し見ている。1949年のフランス、「落ちこぼれ」音楽教師が、「問題児」を集めた寄宿学校で子供たちに合唱を教え、地元の伯爵夫人からも評価されるなど成果をあげるが、1年も経たないうちに学校をクビになってしまうという物語だ。「コーラス」というタイトルで日本語版も出ている。

 

映画は、ニューヨークでコンサートの開演を控えた世界的指揮者、ピエール・モランジ(Pierre Morhange)に、フランスから母の死を知らせる電話が入るシーンで始まる。公演後、フランスに帰国し、埋葬を済ますが、その晩、雷雨のなか、一人の初老の男がモランジを訪ねてくる。約50年前、寄宿学校で一緒だったペピノ(Pépinot)だ。ペピノはなぜか彼らの音楽教師だったクレマン・マテュー先生(Clément Mathieu)が当時つけていた日記を持っており、「これは君に渡すために持っているのだ」と言って、モランジに差し出す。

 

モランジは、シングルマザーの一人息子で教師に反抗的な問題児だった(下の写真で緑色の輪で囲っている)。一方、ペピノは、ひ弱なちびっ子で勉強もできず、いじめられっ子だった(最前列中央、ピンク色の輪)。戦災孤児だが、土曜日に父親が迎えに来てくれると信じて疑わず、いつも校門の柵に一人佇んでいるのだった。そして、1949115日、«Fond de l’Étang»(「池の底」)というこの寄宿学校に、初老の音楽教師クレマン・マテューが舎監として赴任してくる(前列右端、オレンジ色の輪。前列左端は校長)。

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マテュー先生は、落ちこぼれ音楽家(un musicien raté)で、他に職がなく、この学校にも音楽教師としてではなく、寮の舎監(surveillant、俗語でpion、ピョン)として赴任してきたのだった。生徒たちは、さっそく彼に«crâne d’œuf, crâne d’obus»(玉子頭、砲弾頭)というあだ名をつけ、からかいや悪さを始める。この学校の生徒は親がいないなど複雑な事情を抱える者が多く、いたずらや非行は日常茶飯事だった。校長のラシャン(Rachin)は、生徒にも他の教師にも権威主義的、高圧的で、生徒に対しては「やられたら、やり返す」«action-réaction»という厳罰主義を実践していた。

 

そんな中、マテュー先生は生徒に酷いことをされても彼らをかばい、何とか彼らの良いところを見出そうと努力する。ひょんなことから、共通の目標が見つかる。合唱だ。特に問題児モランジは天性の美声、歌唱力を持っていた。ひ弱な少年ペピノは歌を知らなかったが、マテュー先生は彼にも「合唱団長助手」(assistant chef de chœur)という役目を与える。多くの生徒は一生懸命、合唱の練習をするようになったが、どうにも手に負えない生徒もいた。札付きの非行少年モンダン(Mondain)だ。彼は結局、校長の金を盗んだ嫌疑で放校される。

 

合唱団は成功するが、校長の不在中、火事が起きてしまった。(おそらく放校されたモンダンの仕業と思われる。)校長はマテュー先生に全責任を押しつけ、彼をクビにする。しかも、生徒と会うことを禁じ、今日の18時のバスで出て行けという条件までつけた。

 

マテュー先生が、一人鞄を持って学校を出て行こうとした時、教室の窓からたくさんの紙飛行機が落ちてくる。それらには、生徒たちのマテュー先生への惜別の辞が書かれていた。そしてさらに意外なことも起きた。それによって、なぜペピノがマテュー先生の日記を持っていたのかが了解される。

 

それにしてもこの映画は、教育の効果って何だろうかと改めて考えさせる。マテュー先生が、問題児モランジの隠れた才能を見出し、彼の音楽に対する目を開かせたことは大きな達成と言えるだろう。しかし、モランジほどの才能があれば、どこかで別の誰かがその才能を見出していたかもしれない。

 

私個人としては、むしろひ弱ないじめられっ子だったペピノの方に興味がある。彼が学校卒業後、どこでどんな人生を送ったかは全く分からない。しかし、老人になってモランジを訪ねて来た彼の立ち居振る舞い、顔つきを見る限り、彼が真っ当な人生を送ってきた真っ当な人間であることは明白だ。そのこと自体が、マテュー先生の大きな教育効果かもしれない。私はいつもこのことに思いをはせる時、深い感動を覚える。

 

では、札付きのワル、モンダンはどうか。彼に関しては、マテュー先生をもってしても、如何ともし難かった。

 

*この映画の上映後、フランスでは男の子の間で合唱団に入るのが流行ったらしい。なお、余談だが、ペピノの子役を演じたMaxence Perrinは、モランジュの大人役を演じたJacques Perrinの子供だ。そして、Jacques Perrinは、かのイタリア映画「ニュー・シネマ・パラダイス」(1989年)で、主人サルヴァトーレの大人役を演じている。これも私の大好きな映画だ。

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