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フランス大統領選-オランドは単に「消去法」か? [フランス]

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先週の日曜日(56日)に行われたフランス大統領選挙(2回目)は、大方の予想通り、社会党のオランドが、UMP(国民運動連合)の現職、サルコジを破って当選した(得票率は51.68%48.32%)。地域別には、577の選挙区のうち33357.5%)でオランドが勝った(59日付ル・モンド紙9面)。サルコジが勝った選挙区が多かったのは、北東部のアルザス、ブルゴーニュ、シャンパーニュ・アルデンヌ、フランシュ・コンテ、ロレーヌ、北西部のロワールの一部、南東部のコート・ダ・ジュールやコルシカなどである。

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これらはいずれも第1回投票でル・ペン(FN)への投票率が高かった地域であり、ル・ペン自身は、2回目の投票で白票を投じることを表明したにもかかわらず、かなりの票がサルコジに流れたことがわかる。実際、ル・モンド紙によれば、ル・ペン支持者の51%はサルコジ、35%は棄権、白票・無効票、14%はオランドに投票したとのことである(58日付12面)。一方、メランション支持者の81%はオランドに入れた。

 

有権者の個人属性別にみると、年齢別では60歳以上、職業別では農業・商人、引退者でサルコジの得票数がオランドを上回ったが、それ以外の属性ではすべてオランドが上回った。特に、25-34歳層と中間的職業でオランドへの支持率が高くなっている。

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オランドの勝因に関して、多くの報道が共通して指摘しているのは次の2点だ。一つは、反サルコジ感情«antisarkozysme»の強さである。世論調査によると、オランドに入れた人の55%は「サルコジへの道を封じたかったから」であり、「オランドが大統領になってほしいから」は45%にとどまったという(58日付ル・モンド紙12面)。

 

もう一つは、2008年秋のリーマン・ショックが引き金となって起きた経済危機の中で、現職の大統領や首相が不利な立場に置かれがちなことである。59日付のル・モンド紙(11面)によれば、200810月以降、EU27ヵ国のうち16ヵ国で政権交代が起きている。今回のフランスのように右からから左という例ばかりでなく、イギリス、ポルトガル、スペインのように左から右という例も多い。要するに右であれ、左であれ、経済がよくならなければ退場を命じられる可能性が高いということだ。政権交代がなかったのは、最も経済状況のよいドイツ、そしてスウェーデン、エストニア、ラトヴィアなど例外的だ。

 

では、オランドは消去法によって生まれた大統領に過ぎず、その政策は期待できないのか? 58日付ル・モンド紙の4面に載ったジェラール・クルトゥワ(Gérard Courtois)氏のコラム«Un succès logique et fragile»(必然的だが壊れやすい成功)などは、どちらかと言えばそうしたトーンだ。つまりオランドが選ばれたことには必然性があったが、彼が大統領として成功するには、多くの困難が待ち構えており、610日、17日のフランス議会総選挙の結果や、野党(UMPFN)の動向にも依存し、予断を許さないと主張している。また、世論調査の結果によれば、オランドによってフランスがよくなると思っている国民は26%に過ぎず、46%は悪くなる、28%は何も変わらない、と考えているという。

 

さらに、58日の日本の主要全国紙をみると、オランドは財政出動という人気取り政策を約束したが、それは緊縮財政を重視するドイツとの間で軋轢を生み、EU経済に対する「マーケット」の不安を高め、日本経済にも円高を通じてマイナスの影響が及ぶという主張が基調になっていた。ギリシャの動向もあり、ヨーロッパの信用不安再燃の可能性があることは否定しないが、今回のフランス大統領選挙の結果に関する解説としては、日本の主要紙の報道はあまりに一面的、皮相な見方ではないか。とりあえず紙面を埋める必要があって書いたのかもしれないが、“quality paper”を自認するならば(自認していないかもしれないが)、もっと総合的な見方や解説を示すべきだと思う。この点については、明日、改めて書きたい。

 


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