パスカル「パンセ」-壁 [パンセ]
「われわれは絶壁が見えないようにするために、何か目をさえぎるものを前方においた後、安心して絶壁のほうへ走っているのである」(B183、S198、L166)。«Nous courons sans souci dans le précipice après que nous avons mis quelque chose devant nous pour nous empêcher de le voir.»
「小さなことに対する人間の感じやすさと、大きなことに対する人間の無感覚とは、奇怪な転倒のしるしである」(B198、S525、L632)。«La sensibilité de l’homme aux petites choses et l’insensibilité aux plus grandes choses: marque d’un étrange renversement.»
われわれは、しばしば壁を作る。「ベルリンの壁」は物理的な壁の例だ。その目的は人の移動を制限することにあったが、同時に相手を見ないようにする、知らないようにする、なきものと扱う・・・といった含意を伴った。「壁を作る」というのは、何も物理的な壁に限られない。心理的な壁もある。嫌なことは見ないことにする、知らないことにする、そんなことはあり得ないと考える・・・。
恥ずかしながら私は、2011年3月の福島第1原発の事故があってはじめて、いわゆる「原子力ムラ」の実態を知るに至った。そして、知れば知るほど「壁」の功罪を考えさせられた。短期的には「功」が勝るかもしれないが、長期的にはおそらく「罪」が勝るということも。
*写真はいずれも「ベルリンの壁」。
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