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那須・藤城清治美術館 [美術]

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お盆休みシーズンが本格化する直前の昨日、那須に行ってきた。お目当ては、この615日にグランドオープンした藤城清治美術館だ。開館時刻の9時半に行ったが、既にかなりの人出だった。お客さんは老若男女と多様で、藤城清治のファン層の幅広さを実感した。

 

和風の立派な門をくぐって林の中をしばらく歩く。左手にはかわいらしいチャペルがある。帰りに立ち寄ったが、正面にはノアの箱舟、入口側にはこびとのステンドグラスがあった。林は決められた一本道の順路しか歩けないが、もっとあちこち歩いてみたくなるような立派な林だった。余談になるが、フランスのアルビにあるロートレック美術館は内部の展示もさることながら、隣接したフランス庭園や川の眺めも見事だった(2012627日付、当ブログ「アルビ(2)」を参照)。藤城清治美術館でも林の中に散歩道が造れないだろうか。

 

中の展示も素晴らしかった。順路に沿ってほぼ作成年順に藤城氏の多くの作品を見ることができる。プロジェクションマッピングなど最新の趣向を凝らした箇所もあった。圧巻は「魔法の森に燃える再生の炎」だろうか(「図録」の表紙にその一部が載っている)。この美術館に展示するために作成され、開館直前までかかった大作だ。藤城ワールドではお馴染みのこびと、ケロヨン、木馬、ネコなどに加え、魔法使いが多数登場している。

 

東日本大震災の被災地に関する作品も多数展示されている。南三陸町防災対策庁舎、陸前高田の奇跡の一本松、気仙沼の陸に上がった共徳丸などだ。中でも印象深かったのは「福島 原発ススキの里」だ。そこには藤城作品によく登場するこびともいなければ、「南三陸町防災対策庁舎」や広島原爆ドーム(「悲しくも美しい平和への遺産」)に登場する千羽鶴の群れもいない。命のシンボルとして描かれているのは、一面に生い茂る丈の低いススキ、二輪のひまわり、川を遡上する小さな鮭たちだ。あとは、傾いた鉄塔や崩れた建物、がれきなどだ。がれきの一つに宮澤賢治の次の言葉が書かれている。「世界がぜんたい幸福にならないうちは 個人の幸福はあり得ない。」

 

多くの作品に、作者自身のコメントがついているのも興味深かった。なぜその作品を描いたのか、何を訴えたかったのか、そして作者自身の好みなど。コメントの中に、ある対象物に興味を持って、何年も通ってスケッチを完成させたというものもあった。藤城氏は1924年生まれの89歳、その衰えることを知らない創作欲と確かな技量には脱帽するしかない。

 

藤城作品のファンはもちろん、そうでない人にも広く勧めたい素晴らしい美術館だった。その誕生を心から喜びたい。

 

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