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バーゼルへの車中で乗り合わせたスイス兵 [スイス]

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20097月の土曜日、列車でジュネーヴからバーゼルへ向かった。直通で2時間半くらいかかる。ルートはいくつかあるが、ローザンヌからいったん北上し、その後、ヌシャテル湖の北岸を東進するのが一般的だ。ヌシャテル湖岸を通ったのは、このときが最初で最後だったので印象深い。ヌシャテル(Neuchâtel)の街でいったん降りてみたかったが、旅程上かなわなかった。車窓からお城の写真を撮るのが精一杯だった(写真↓)。

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さて、私は2人掛けの席が対面に向かい合った4人席の1つに一人で座っていた。やがて、軍服姿の若い兵士が2人乗り込んできて、向かいの席に座った。ローザンヌからだったか、もう少し先の駅からだったか覚えていない。また、兵士と言っても軍服を着ていたからそう言ったまでで、二十歳過ぎの普通の兄ちゃんだ。二人はさっそく、小型パソコンを取り出してテレビゲームに興じ始めた。ドイツ語で話していたので、何を言っているのか分からなかったが、とにかく楽しそうだった。そういう年頃なのだろう。

 

終着駅のバーゼルに着く前に一人が降り、もう一人の兵士と私の二人だけになった。彼の方は、さっきまで騒いでいてバツが悪かったのか、観光客にしてはスレた感じの東洋人が珍しかったのか、私にフランス語で話しかけてきた。

 

周知のように、スイスは国民皆兵制を堅持しており、若い男性は徴兵に応じる義務がある。ただ、週末は休暇を取って実家に帰れるらしく、今日はその日だったのだ。私は以前から不思議に思っていたことを聞いてみた。スイスの主要な公用語は、ドイツ語、フランス語、イタリア語の3つだ。独立性の高いそれぞれの州(カントン)がそれぞれの言語を使うのはよい。でも、国軍としてのスイス軍は何語を使っているのか、と。

 

英語? ということはない。3つの公用語を併用しているというのが正解だ。でも、一つの部隊が言語圏の異なる3つの地域出身者で構成されていても問題はないのか? どうやら独仏伊の3言語混成部隊は実際にはまずないようだが、独仏混成部隊は珍しくないとのことだった。指揮命令関係の定型的なコミュニケーションに関しては、一応、両国語を使いこなせるということなのだろう。もっとも、階層的な組織構造を前提とすれば、指揮官さえ両国語を使えれば大きな支障はないのかもしれない。

 

スイスの言語事情と言えば、子供が親の転勤で異なる言語圏の学校に転校したとき、授業の使用言語、教科書類がまるっきり変わってしまうので、適応するのが大変だという話も聞いた。これだけの不便がありながら、共通言語(公用語のうちの一つや、英語など別の言語)を採用しようという話は聞かないし、実態的にもそういう動きはない。例えば、ドイツ語系スイス人とフランス語系スイス人が英語で会話をすることは普通ない(それをやったのが「アメリカ合衆国」という特殊例だ)。最もありそうなのは、ドイツ語系スイス人が片言のフランス語を使うことだ(フランス語系スイス人がドイツ語を話せる確率は低いので)。スイスのように経済合理主義精神が行き届いた国の国民が言語や文化に関しては一切妥協しない、というのはなかなか興味深い現象だ。日本人も、「グローバル化」ということの意味をもっと真剣に考えた方がよい。グローバル化とはアメリカ化の謂だと考えるようなヨーロッパ人はまずいない。

 

さて、二人の目的地、バーゼルが近づき、彼は私に何かプレゼントしたいと思ったようで、鞄の中をごそごそと探し始めた。そして、軍から支給された板チョコを何枚かくれた。«Merci, et au revoir, monsieur.»と思わず言ってしまったが、ドイツ語でお礼を言えばよかったなと、後から悔やんだ。何を隠そう、私は大学時代の第二外国語はドイツ語でA評価だったのだ。悲しいかな、今ではすっかり忘れてしまったが、«Danke schönくらいなら言える。

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*写真は上から、スイス中央部のユングフラウヨッホ山頂近く、スイス北部のヌシャテル、そしてバーゼル駅。

 


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